研究概要 |
自然免疫が獲得免疫の成立に深く関わっていることが示されている。現在では、自然免疫異常は、炎症、感染、アポトーシスなどの多岐にわたる疾患に関係することが明らかになっている。本研究では、昆虫機能を活用して、天然資源に含まれる自然免疫制御物質を探索した。 (1) 微生物由来の自然免疫制御物質の探索 われわれが独自に開発した遺伝子組み換えショウジョウバエを用いたアッセイを用いて、約8, 000種の微生物抽出物の自然免疫制御作用をスクリーニングした。その結果、ベンゾイルピロール系化合物であるセラストラマイシンAと新規なジヒドロベンゾピロン誘導体を、それぞれ自然免疫抑制および活性化物質として見出した。さらに、セラストラマイシンAの構造として提示されていた2種の構造異性体を合成的に得ることにより、その構造を確定した。セラストラマイシンAは、10ng/mlでショウジョウバエの自然免疫を強く抑制した。さらに、セラストラマイシンAは、哺乳類細胞を使った実験では、炎症性肺疾患や急性、慢性リューマチ患者で亢進しているケモカインIL-8, MCP-1の産生を100ng/mlで抑制した。一方、ジヒドロベンゾピロン誘導体は、10μg/mlでショウジョウバエの自然免疫系を上昇させた。 (2) 昆虫寄生菌・黒姜病菌の細胞毒成分 自然免疫制御物質を探索している過程で、昆虫寄生菌の1種である黒姜病菌を大量に培養して得た培養液から強烈な細胞毒性を示す新規なジテルペンーピロン系化合物メタリジンA, Bを単離した。両化合物の化学構造は、物理化学的データと相互の化学変換等により決定した。さらに、両化合物の各種誘導体を合成し、構造-活性相関に関する考察を加えた。
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