研究概要 |
当研究室独自に構築した未利用天然物ライブラリーを用いて,主に癌に関連するシグナル伝達分子であるTRAILおよびWntシグナル等を標的とした天然物の探索を行った. 1)デス受容体の一つDR5(=TRAIL-R2)に着目し,Ardisia colorata(ヤブコウジ科)について,DR5誘導作用をもつ活性成分の探索を行った.その結果本植物より新規イソフラボノイドcoloratanin Aを含む11種の化合物を単離した.これらのうち,既知化合物である2-hydroxyfomonometinが17.5および35.0μMにおいてコントロールに比べて2.4倍のDR5プロモーター活性を上昇させることが判明した.またTRA皿耐性AGS細胞に対する耐性克服作用を示す天然物の探索を行い,放線菌Streptomyces sp. IFM1O937の培養濾液より新規チロシン誘導体2種および既知の抗生物質novobiocinを単離した.これらのうちには,TRAIL耐性AGS細胞に対してTRAIL感受性を増強させ,TRAILとの併用による相乗効果を示すものがあった. 2)Wntシグナル阻害活性をもつ天然物としてタイ産Eleutherine palmifolia(アヤメ科)より得られた活性成分の一つisoeleutherineは,ヒト大腸がん細胞株への選択的な細胞毒性を示した.また,本化合物のTCF/β-カテニン転写阻害活性は,核内のβ-カテニン量の減少に基づくことが示唆された.
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