ユビキチン-プロテアソームシステムを阻害する物質が、新しい機序で作用する抗がん剤として期待されている。そして、私たちは、新規抗がん剤の開発を目指して、この系に対する阻害物質を天然資源から探索している。そして既に、(1)プロテアソームに対する阻害物質として種々のagosterol誘導体及びsecomycalolide A、(2)ユビキチン活性化酵素(E1)に対する阻害物質としてhimeic acid A、(3)がん抑制タンパク質p53とそのユビキチンリガーゼ(E3)であるHdm2との相互作用を阻害する物質として(-)-hexylitaconic acid、(4)p53がポリユビキチン化された後にプロテアソームへと運搬されるステップに対する阻害物質としてgirolline、及び、(5)ユビキチン結合酵素(E2)の一つであるUbc13-Uev1A複合体の形成を阻害する物質としてleucettamol Aを、海綿や海洋由来真菌から発見・単離した。これらの中でも、平成20年度の成果は、leucettamol Aの発見であり、第12回がん分子標的治療研究会総会で成果発表し、Bioorg. Med. Chem. Lett. に論文が掲載された。本研究課題で着目している「がん抑制遺伝子産物の作用を増強させることにより抗がん作用を示すと期待される化合物」は、上記(3)〜(5)の作用を示す化合物の中から発見できると考えられるので、インドネシアで採集した海洋生物の抽出物を用いてスクリーニングを行った。次年度は、スクリーニングの結果、有望な活性を示したサンプルから化合物の精製を行う予定である。
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