研究概要 |
インフルエンザウイルスの感染,接着に関わる特定の受容体シアロオリゴ糖鎖を高い反応効率で,且つ単純な手法でポリペプチド上(納豆菌由来γ-ポリグルタミン酸)に多価に配した人工ムチン(糖鎖含有ポリペプチド)を機能設計し,感染阻害活性を飛躍的に高めた強力な変異克服型抗インフルエンザウイルス剤の開発を目的とした。 ムチンは高度にグリコシル化された高糖含量(40〜60%)の多様な糖鎖構造を有する糖タンパク質の総称で,膜表面に存在し細胞表面の保護,細菌感染の防御などに役立っている。インフルエンザウイルスに対する強力なバリア材料の開発を念頭に人工ムチン(糖鎖ポリペプチド)の機能設計を行う。人工ムチンの大量生産を克服するためのブレークスルーとして,ムチン分子を単純化したモジュールとし各々をウイルス受容体糖鎖構造部(A),リンカー部(B),γ-ポリグルタミン酸をベースとしたポリペプチド部(C)に3分割し,これらA,B,Cの各モジュールを単純かつ簡便なプロセスで効率的に繋ぎ合わせる画期的結合手法(グライコモジュール法)を開発し,実践的合成法の目処を立てた。これら作製した人工ムチンライブラリーをインフルエンザウイルス感染阻害試験に供したところ,Neu5Acα2-6LacNAc側鎖を含むシアリル糖鎖ポリペプチドは,ヒト型インフルエンザウイルスAと強力に結合するのに対し,Neu5Aca2-3LacNAc/Lac側鎖のそれは,トリ型インフルエンザウイルスAに結合特性を示した。
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