研究課題/領域番号 |
19310143
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 准教授 (80199075)
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研究分担者 |
水谷 正治 京都大学, 化学研究所, 助教 (60303898)
清水 文一 京都大学, 化学研究所, 助教 (50324695)
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キーワード | グルタチオン / γ-グルタミルシステイン合成酵素 / γ-グルタミルトランスペプチダーゼ / 反応機構依存的阻害剤 / 病原性連鎖球菌 / グルタミンアンタゴニスト / acivicin / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
本年度は、グルタチオン生合成系および代謝系の鍵酵素を標的とした特異的阻害剤の合成展開を行った。すなわち、γ-グルタミルシステイン合成酵素(GCS)およびγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の2種の酵素について、それぞれの反応機構および立体構造にもとづく合理的分子設計により、強力な不可逆的阻害剤を合成した。以前、本研究代表者らが解明した大腸菌由来GCSの立体構造にもとづき、そのCys結合部位において、側鎖SHの認識に関わると予想されるArg132に標的を定め、グアニジノ基と相互作用する可能性のあるシアノ基を側鎖に導入したスルホキシミン誘導体を合成したところ、予想どおり、これまで得られた阻害剤に比べ数倍以上の活性をもつ強力な反応機構依存的阻害剤として作用することがわかった。この阻害剤は、GCS阻害剤として従来から使われているBSOの7000倍の活性をもつ最強のGCS阻害剤である。また、一次構造上、同じArg残基を保存している、病原性連鎖球菌Streptococcus agalactiae由来GCSに対しても、本化合物はきわめて強力な阻害剤として作用し、両酵素が共通したCys認識機構をもつことが示唆された。一方、GGTの不可逆的阻害剤として、グルタチオンのCys-Gly構造を組み込んだ一連のホスホン酸誘導体を合成し、ヒトおよび大腸菌由来GGTに対する阻害活性を網羅的に調べたところ、ヒトGGTは、基質グルタチオンのCys部分の側鎖の構造および立体化学をきわめて厳密に認識し、"グルタチオナーゼ"とも呼べる厳密な基質特異性を示したのに対し、大腸菌由来GGTの基質および立体特異性は広く、両酵素の生理学的役割の違いを化学的に裏付けることができた。また、GGTやGAT酵素の阻害剤として有名な天然物acivicin, azaserineについて、大腸菌GGTとの複合体結晶のX線結晶構造解析を行ったところ、両化合物とも、GGTの活性中心Thr381に共有結合していたが、従来からの予想とは全く異なり、四面体型中間体および転位生成物が生じていることが明らかとなり、いわゆるグルタミンアンタゴニストの作用機作について新たな阻害機構を提唱した。
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