研究課題/領域番号 |
19310143
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 教授 (80199075)
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研究分担者 |
渡辺 文太 京都大学, 化学研究所, 助教 (10544637)
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キーワード | γ-グルタミルトランスペプチダーゼ / 反応機構依存型阻害剤 / ヒト線維芽細胞 / グルタチオン / 細胞レドックスポテンシャル / 急性腎障害 / 酸化ストレス / γ-グルタミルシスティン合成酵素 |
研究概要 |
本年度は、グルタチオン代謝の鍵酵素であるγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)について、その不可逆的阻害剤(ボスホン酸ジエステル型遷移状態アナログ阻害剤)のうち、ヒト(哺乳類)のGGTに対し特に高い活性を示し、我々がGGsTop (TM)と命名した化学的に安定な阻害剤を用いて、ヒト皮膚真皮の線維芽細胞に対する効果を調べた。その結果、GGsTopは高濃度(1mM)でも細胞に対する毒性が全く見られず、細胞内のグルタチオン濃度を、投与後6時間から8時間後に有意に、しかも一過的に減少させることを見出した。この結果は、GGTの活性制御によって細胞内のグルタチオン濃度、すなわち細胞のレドックスポテンシャルを制御することが可能であることを示す。また、GGsTpによる一過的なグルタチオン量の減少に伴い、グルタチオンの関与するシグナル伝達系が働き、細胞の特定のタンパク質が過剰生産されることも見出された。GGT阻害剤は、グルタチオン生合成系の律速酵素であるγ-グルタミルシステイン合成酵素を阻害した場合に見られる恒久的で急激なグルタチオン低下に比べ、穏やかに一過的にグルタチオン量を減少させ、細胞のアポトーシスを引き起こさないという点で対照的である。また、急性腎不全モデルラットを用いた実験において、虚血再灌流による腎臓の酸化的ダメージを測定すると、GGsTopを投与したラット群では、虚血再灌流性の腎障害が、用量依存的に改善されることを見出した。すなわち、虚血直後および再灌流6時間後のスーパーオキシド産生量は、GGsTopによって用量依存的に顕著に抑制され、再灌流29時間後でも、スーパーオキシドの産生は抑制されていた。これは、GGsTopによりグルタチオンの分解が抑制され、酸化ストレスが軽減されたものと考えられるが、この系統の薬物での急性腎障害改善効果が見られた例は極めて少なく、貴重な実験結果である。
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