研究課題/領域番号 |
19310148
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
玉置 昭夫 長崎大学, 水産学部, 教授 (40183470)
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研究分担者 |
山田 文彦 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60264280)
島谷 健一郎 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教 (70332129)
浜口 昌巳 独立行政法人水産総合研究センター, 生産環境部・藻場干潟環境研究室, 室長 (60371960)
万田 敦昌 長崎大学, 水産学部, 准教授 (00343343)
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キーワード | 砂質干潟 / 天草 / ハルマンスナモグリ / イボキサゴ / 浮遊幼生 / メタ個体群 / メタ群集 / 海洋保全 |
研究概要 |
西九州の天草下島北端の富岡湾干潟には、十脚甲殻類のハルマンスナモグリ(以下スナモグリ)と巻貝のイボキサゴを含む多様なベントス種が生息している。過去27年間,基質攪拌作用の大きい前者の個体群の増大と凋落により、後者個体群の絶滅と復活がもたらされた、前者の減少には近年増えてきたアカエイの摂食による基質攪乱の影響が示唆されたが、砂の浮遊掃流過程下での摂食痕のギャップ動態は解明されていなかった。後者の復活には天草下島の東海岸からの幼生供給があったことが示唆されていたが、実際の幼生輸送経路は解明されていなかった。本研究は、富岡湾干潟と天草下島東海岸の干潟におけるスナモグリとイボキサゴ個体群が存続するしくみをメタ群集動態の観点に立って明らかにし、今後どの干潟を保全することがメタ群集の保全に有効であるか特定することを目的とした。7月末の大潮干潮時、初日と2日目の間に生成されたアカエイ穴を幾つか選び、周りから砂とスナモグリが侵入して元の個体数密度を回復する過程を4日間追跡したことにより、エイによるスナモグリ個体群へのインパクトをギャップ動態の観点に立って解析する見通しが立てられた。また、イボキサゴの繁殖期はほぼ10月に集中していた。幼生は非摂餌型であり、受精後3.5-21日で着底する。幼生の鉛直分布の日周変化を知るためのポンプ採集と幼生を迅速確実に同定するための種特異的モノクローナル抗体の作成を行った結果、幼生が水柱表層に分布していることが強く示唆された。さらに、幼生を無機粒子と仮定したうえでの受動輸送機構の調査を行った。これには、GPS携帯電話搭載の漂流ブイを用いた追跡調査、富岡湾沖合での漂流ハガキ放流と富岡湾干潟での回収、富岡湾沖合での海底設置型ADCPを用いた流速測定が含まれていた。その結果、イボキサゴ幼生はいったん引き潮に乗って天草下島東海岸から有明海の外に出てくれば、富岡湾干潟に到達できることが示唆された。
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