研究課題
日本に侵入している外来カワリヌマエビ属Neocaridina spp.とその共生動物の由来を調べるため、輸出入業者への聞き取りに基づき、その産地と推定される中国浙江省をはじめ長江流域の3つの省でカワリヌマエビ属の採集を行なった。のべ9地点でカワリヌマエビ属を採集し、各地点および過去に韓国で採集した標本について6-22個体のmtDNACOIおよび16SrRNA遺伝子の配列(合計995塩基)を調べた。その結果、浙江省を含めた中国のサンプルのハプロタイプには、これまで国内各地のカワリヌマエビ属で検出されてきた外来クレードが高頻度で含まれていた。また、韓国のサンプルにはこれまで在来と考えてきたクレードに属するハプロタイプが検出された。このことは韓国のカワリヌマエビが在来カワリヌマエビと遺伝的に近縁であることを意味しており、mtDNAだけでは捉えきれない侵入も生じている可能性が示唆された。また安徽省(1地点)と浙江省(2地点)のカワリヌマエビ属から、ヒルミミズ類Holtodrilus truncatusの出現が確認された。ヒルミミズがカワリヌマエビ属に共生する割合は最大37%で、出現したいずれの地点でもツノウズムシ類Scutariella spp.が同所的に見られた。この状況は、カワリヌマエビの外来個体群が侵入していると推測されている兵庫県菅生川水系での観察結果とよく似ていた。過去3年間の調査で採集されたヒルミミズの国内個体群(兵庫県、和歌山県、宮古島)と中国個体群(広東省、浙江省)についてmtDNAの解析を行ったところ、兵庫県の個体群が浙江省の個体群と最も近縁な位置にあることがわかった。この結果は、宿主のカワリヌマエビ属で推定された結果と整合性があった。これらのDNA分析の結果から判断して、これまでの聞き取り調査によって推定されてきた外来カワリヌマエビ属の侵入経路はほぼ正しいものと考えられた。
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Taiwan Journal of Biodiversity 12
ページ: 97-110
CEL 92
ページ: 47-50
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