研究概要 |
最終年度に当たる本年度は,主に前年度までに得られたデータを使用した解析と補足の調査を行った。韓国・麗水では,降水の水質の季節変化を追うために,降水量のモニタリングとひと月毎の採水・試水の化学分析を行うことで,大気から降水によってもたらされる物質量の把握を試みた。さらに,日本・四日市地域では,水道水源井から地下水を採水することで,涵養域を明らかにするとともに,涵養域から水道水源井までの滞留時間や流動経路,土地利用形態の地域的差異が水道水源井に及ぼす影響を推定することで,過去に排出された物質の動態評価を行い,環境復元モデルおよび将来に向けた理想的な水管理システム構築に必要な環境実態を明らかにした。韓国・日本の調査から,沿岸域において排出された化学物質は,主に山地斜面の麓の部分において降下する傾向があることがわかり,この地域が海岸に向かって広がる沖積地を流動する地下水の涵養域になっていることから,水資源の安定的な供給や水質管理を考えたとき,この地域における土地利用計画などの行政サイドからの施策が必要であることが導き出された。 環境復元モデルについては、韓国麗水産業団地での生態効率性指標を開発した。麗水産業団地の生産高は、貨幣(Won)の価値と原料の輸出・輸入の原価変動幅が大きいため、製品部分においては、総生産額、エチレン生産量を基本データとし、電力消費量、工業用水使用量及び排水排出量を環境指標として経済モデルを開発した。2004年を基準年度とし、2006年の環境経済効率指数を計算した結果、0.954で指数が悪化した。しかし、麗水産業団地において、新しい試みである生態産業団地事業が成功する場合、2015年には指数が1.158となり、約15%改善されることが予測できた。 このように,現地における環境実態を明らかにし,その結果とともに環境シミュレーションを行いモデル化することは,環境条件の大きく異なる地域に対応した形でその後の対策を講じられるというメリットがあることから,きわめて重要な研究手法であることが確認できた。
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