研究概要 |
19年年の成果として特筆すべきは,10月16日(学習院大学),17(法政大学),20日(京都大学)の3日間,「『創造的進化』の伝播」のタイトルの下,それぞれ現在ベルクソン研究の最先端に位置する,フランズからの6名,イギリスからの3名,アメリカからの1名の研究者を招き,それに日本からの9名が加わって行った国際シンポジウムが成功裡に執り行われたことである。これはまずその形において,日本における西洋哲学研究のあり方を刷新するものであったと思う。すなわち,ここでは選ばれた9つのサブテーマごとに,内・外それぞれ1名の発表者が,いわば同じ土俵で,フランス語(一部英語)で提題を行い,さらにフランス語で討議が行われた。丙・外からの提題は質においで拮抗し,討論もしばしば白熱したものになった。しかも,和訳発表要旨が配布され,質疑が通訳付きだったとは言え,このようなフランス語べースの催しに,若い研究者を中心に毎回100名前後の一般聴衆の参加があり,100年に及ぶ,日本におけるベルクソン哲学受容の質の高さと量的拡がりは,外からの参加者たちに深い印象を与えるものであった。そしてそのような印象が,シンポジウム中にも,またその後にも様々に伝えられてきたことで,今回のこの催しは,日本のベルクソン研究がその内容において自らを,ポジテイブに見直していく,好機を与えることになったとも言いえよう。さらにこの催しが,外におけるべルクソン研究のあり方にも,一定の見直しをさせつつあるとも言いうると思う。すなわち,このシンポジウムを機に,.その後,本研究担当者の数名が,やはり『創造的進化』刊行100周年をめぐって執り行われた,韓国(10月),フランス(11月),ブラジル(12月)での催しに招かれ参加する,ということも生じてきたのである。最後に,このような催しの成功のために,それを準備し,それを総括する.地道な活動が年問を通じて行われていったということも,当然のことながら,一言,付け加えたい。
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