研究課題/領域番号 |
19320008
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
水上 雅晴 琉球大学, 教育学部, 准教授 (60261260)
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研究分担者 |
近藤 浩之 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (60322773)
石井 行雄 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60241402)
比良 輝夫 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00109406)
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キーワード | 中世 / 経学 / 易学 / 五経 / 清原家 / 桃源瑞仙 |
研究概要 |
本年度は、主に二つの論点に即して研究を進め、以下のような研究成果を得た。 1. 清原家の経学の構造とその特徴について:四書学と比べると研究蓄積が少ない清原家の五経学について考察を加え、その経学の枠組み、五経各経に対する研究に精粗があること、各経点本と抄物における新注受容の度合いに相違があること等を解明した。五経の講釈の内容を見ると、抄物の記述の多くが『正義』の文章をそのまま、もしくは加工して引いた程度のものであり、『正義』に対する依存度が極めて高いことが看取される。このことは、明経博士家として経書の逐語的な講義を実施した清原家にとって諸経の『正義』が恰好の「種本」であったことを意味し、博士家の五経学は基本的に「義疏の学」の範囲におさまる低い段階にとどまっていたと結論づけられる。なお、清原家の経学関係書の普及を図るため『中庸抄』全文の翻葵書を発表した 2. 日本中世易学の実態について:日本中世易学注釈の集大成と見なされる桃源瑞仙『百衲襖』の成書過程、内容および構造について解明を図り、国際学術会議の場で二度にわたって研究成果を発表した。『百衲襖』は、易の古注・新注に即した義理の講釈、『易学啓蒙』などに即した象数の講釈、それに占筮を含む実用の方面に関する講釈、という三つの部分からなっている。瑞仙は易学の伝授について朱子『本義』『啓蒙』-胡方平『啓蒙通釈』-胡一桂『本義纂疏』『啓蒙翼伝』という流れを本流と見なし、自身の易学をその本流に連なるものと位置づけている。これらのことを明らかにした上で、講釈の中に三教一致の思想や日本式の筮儀や祈願詞が含まれていることに着目し、中世易学に関する先行研究を補完し、日本易学に見られる独自性の一端を解明した。さらには、『百衲襖』所引の文章によって胡方平『易学啓蒙通釈』の欠字部分を補うことができる、という文献上の価値を有することも明らかにした。
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