研究概要 |
本研究はインド最古の文献である『リグヴェーダ』(B.C.1200年頃編集,以下RV)の全訳計画(ヴィッツェル,ハーヴァード大学と共編)中,研究代表者の担当分について助成を受けるものである。当初4年間でRV全10巻をドイツ語に翻訳し,ゲルトナーによるドイツ語全訳以後80年の間に,特に印欧語比較言語学の分野で達成された研究成果を中心に取り入れ,解説,注,語彙集を付して一般に利用できる形で出版を目指すものである。現在,当初の計画より遅れてはいるが,全体として順調に成果が挙がっているものと信ずる。既に出版された第1巻はその質を示すものと自負している。 昨年度は第2巻(RV3-5)の出版原稿を計画通り仕上げたが,出版社の事情(移転と代表者の交代)と共訳者1名の病気による交代とが重なり,出版自体は遅れている。これに伴い,2009年度は上記3-5巻に関わる原稿の見直しと,第3巻(RV6-8)のための研究代表者担当分RV7の翻訳研究を行った。次年度は,第2巻の校正,出版,第3巻用最終原稿の完成に向けての作業を行う。今後は,研究代表者が出版計画全体についてより大きな役割を負うこととなり,全体の質的向上と先行部分の改良にも労力を割く予定である。 本年度は,今後のRV研究に欠かせない重要な基礎的作業をも完成した。「古インドアーリヤ語歴史文法」(Old-Indo-Aryan morphology and its Indo-Iranian background)として,オーストリア学士院から近く出版の予定である。
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