本研究は、1990年代にアフガニスタンのバーミヤン渓谷から発見され、ノルウェーのスコイエン・コレクションを中心とする各国の個人蒐集家あるいは研究機関に引き取られた大量の仏教写本類について、海外の研究協力者とともにその解読と内容の比定を行い、出版を目指すものである。平成21年度は前年度に引き続き、海外の研究協力者と共同で出版を目指す解読作業を続けた。さらに6月には米スタンフォード大学に、9月には研究代表者が所属する佛教大学に、海外研究協力者を集めて、各研究者が事前に行った解読成果を持ち寄り、集中的な研究会を行うとともに、この時点での研究成果について研究発表を行った。またスコイエン・コレクション以外に、パキスタンのギルギットから発見されたと伝えられるサンスクリット語による説一切有部教団の長阿含経写本(米アダムスおよび我が国の平山郁夫コレクション所蔵)に対しても、第3篇の「戒蘊品」に含まれる経典類の一部について解読を行い、基礎的なデータを入力した。21年度の特筆すべき成果としては、カローシュティー文字によるガンダーラ語写本群の中に、文章のスタイルと内容から判断して、複数の大乗文献写本断簡が前年度に続いて発見されたことである。菩薩蔵経や般若経など、ガンダーラ語の大乗仏教文献はもはや以前に考えられていたほどその発見が困難な資料ではないことが確認されたことになる。
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