研究課題
本年度は、「中近世ヨーロッパのキリスト教会と民衆宗教」の科研プロジェクトの最終年度として、個別の研究報告と全体の研究の総括を行った。個別報告としては、長谷川まゆ帆「17-18世紀のロレーヌ近辺の未洗礼死産児の洗礼に関わる奇跡信仰の紹介」、櫻井康人「厄介者の聖地巡礼者-受入れ側史料から見た聖地巡礼史」、印出忠夫「中世末期のSaint-Paul-de-Maosole参事会教会における記念祷」、甚野尚志「十二世紀中葉における「教皇首位権」と教会合同の理念-ハーフェルベルクのアンセルムスの『対話』をめぐって」、三浦清美「ロシアのキリスト教化の一断面-ポリスとグレープの殺害と列聖」、小林功「グリュロスの「典礼」」の報告会を行ったが、その上で、ヨーロッパ中世と近世を貫く、教会制度と民衆宗教のダイナミズムをヨーロッパ世界を中心に地域を比較しつつ、それぞれの特徴を踏まえて、共通性と異質性を検討し、まとめの議論を行った。その結果として明らかになったことは、中世カトリック教会、東方ビザンツ教会、近世のカトリック、プロテスタント教会における、教義の異質性を超えた民衆宗教における共通の心性の存在である。巡礼などに代表される、民間の信仰生活の諸相における共通性を改めて確認し、宗教的な心性が民衆レヴェルで中世から近世世界まで、同質のものが継続している事態を個別の問題を通じて再確認できたことに、この科研の共同研究の重要な成果があるといえる。
すべて 2009
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西洋中世研究 1
ページ: 19-29
学習院女子大学紀要 11
ページ: 65-67