平成20年度は、研究代表者の根立が体調を一時崩し、ヨーロッパ及び中国での調査が実施できず、そのため旅費の使用が当初の予定より大幅に減額となった。ただ、海外調査については、代わり連携研究者の平川佳世氏が平成21年2月に米国ワシントン(ナショナル・ギャラリー)、ボルチモア(ウォルターズ美術館)に出張し、ヨーロッパ北方画家に影響を与えたと推測されるイタリア人画家による古代風風景画を実見し、その様式的特徴を確認する調査を実施した。代表研究者の根立は、京都市内を中心に諸調査を行った。主なものとしては、清水寺式千手観音像の根本像となる京都・清水寺本尊千手観音像と、霊験仏として名高く、また和様(定朝様)形成にも重要な意味を持つ京都・平等寺薬師如来像などが挙げられる。また、20年12月の京都大学文学研究科のシンポジウムでは、和様の形成と継承の問題を取り上げ、口頭で発表した。また、仁王像の日本の一般型である岐阜・横蔵寺金剛力士像について、『日本彫刻史基礎資料集成』(中央公論美術出版)で、その詳細なデーターを公開した。分担者の中村は、昨年に引き続き西洋バロック美術における模倣と創造の問題に関して資料収集を行った。この他、連携研究者の武笠朗は定朝様に関する資料収集を継続して行うと共に、霊験仏として名高く、鎌倉時代以降模造が盛んに行われている善光寺式阿弥陀三尊像の資料収集にも乗りだし、その成果の一部を「善光寺御前立本尊と善光寺式阿弥陀三尊像」と題して『"いのり"のかたち善光寺信仰展』(長野県信濃美術館等発行)に発表した。なお、2年目に入った本研究の成果を検討する研究会を9月15日に開催している。
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