美術における模倣は、ある意味きわめて一般的な事象である。しかしながら、模倣は、対象となる美術品を単に写すと言うことだけではなく、対象からある表現上のエッセンスを抜き出し、それを創造の源泉として活用すること、さらには模倣の対象となるものとそれに基づき造り出されたものの間には表現上の類似性がほとんど認められないのに、ある種のキーワードとなる表現、さらには両者を規定する概念の存在を見いだせれば、模倣という行為が行われたと認識される場合さえある。こうした美術にかかわる現象は、洋の東西を問わず発生しており、模倣には従来の概念では語り尽くせない様々な形態があることが分かりる。このような、いわば模倣の概念の拡大といった現象が何故発生してきたかを解明するためには、改めて模倣の意味や機能そのものを問い直す必要性があり、本研究はその解明を目指す。
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