本年度は、チェスター・ビーティ・ライブラリィ所蔵の『竹取物語絵巻』(CBLJ1188)、奈良絵本『伊勢物語』(CBLJ1010)、奈良絵本『住吉物語』(1021)翻刻をし、まにそれをふまえて、國學院大學図書館所蔵『竹取物語絵巻』三種の本文とCBL所蔵本との校合及び物語絵の比較、國學院大學図書館所蔵『伊勢物語絵巻」・奈良絵本『伊勢物語』とCBL所蔵本との物語絵の比較、國學院大學所蔵奈良絵本『住吉物語』三種・『住吉物語絵巻』との本文校合及び物語絵とCBL所蔵本との比較研究もした。さらには、國學院大學図書館所蔵『義経奥州落繪詞』(全五巻)の本文の翻刻及び物語絵の調査をもした。現存する『義経奥州落繪詞』の中で、画中詞を持つ古典籍として希有な作品であり、その特徴と本文を公開した意義は深いと思われる。なお、本年度は研究最終年度にあたり、研究のまとめとして、「物語絵の世界」(全324頁)を上梓した。代表者、連携研究者の成果及び若手研究者7人の研究成果を収載し、若手研究者育成にも寄与した。本「物語絵の世界」の公刊は、國學院大學図書館所蔵の『竹取物語絵巻』、『伊勢物語絵巻』、『住吉物語絵巻』を中心として、それぞれの物語の詞書本文の翻刻及び物語絵・画中画などの調査、研究、CBL所蔵本との比較研究を通して、応永年間における物語の書写活動、慶長年間の古活字本の出現と奈良絵巻の関係、さらには江戸時代の寛文から延宝・元禄期にかけての出版状況・嫁入り本物語絵巻制作の実態を明らかにし、平安時代の物語本文の享受と物語絵巻との関係について、新たな知見を学会に提供することができたといえる。
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