平成20年度の実績概要を日本文学方、中国文学方に分けて記述する。 ■日本文学方 : 研究分担者の福田教授の監修の下、江戸文学研究を代表する研究誌『江戸文学』(ぺりかん社)第38号で「中国文学と江戸文芸」というテーマの特集号を組み、研究の一端を発表した。ここには日本文学方ばかりでなく、中国文学方の本科研費の連携研究者も執筆している。また、本科研費で昨年度作製した『太平記演義』の影印資料を用いた本科研メンバー以外の研究者の論文も掲載されている。 ■中国文学方 : 昨年に引き続き三言二拍の翻訳底本作製作業に従事した。翻訳の少ない『二刻拍案驚奇』から手をつけることにし、翻訳分担などを決め、着手した。また、共通の翻訳フォームが必要であることから、連携研究者の早稲田大学岡崎教授の研究室で試作版作製し、『中国古典小説研究』第13号上に掲載した。この作業は、本科研費研究の主旨に照らし、中国文学研究者だけに特化した訳注作業ではなく、中国語に詳しくない日本文学研究者の利用に堪えることも目標にしたので、語彙、典故、用例については中国白話小説研究者なら比較的常識的なものについても注釈を加えたため、分量、作業量とも増大した。どこまで訳注を施すかは、今後の作業の中でさらに検討する必要がある。また、原文と訳文を左右見開き対照とし、さらに眉批や訳注を脚注としてレイアウトを設計したため、効率よく編集するにはwordなど通常のワープロソフトでは不可能なため、版面編集に特化したソフトを導入した作業を進めた。
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