研究分担者 |
塩川 徹也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (00109050)
月村 辰雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50143342)
塚本 昌則 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (90242081)
野崎 歓 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (60218310)
鈴木 雅生 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (30431878)
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研究概要 |
本研究第一年目は,まず19世紀,20世紀のフランス語で書かれた旅行記の書誌を作成し,欠落していた重要文献を蒐集し,基本コーパスの充実に努めた。また,近年次々と刊行されている近代旅行記関連の目ぼしい研究書をそろえた。これと併行して,研究代表者は現代における知的な旅,記号論による異文化読解の一例として,1960年代におけるロラン,バルトの日本論にかねがね注目してきたが,同じ作家の中国体験との比較を通じてその日本体験の特質を定義する試みとして,2007年5月に招聘された台湾国立中央大学で「ロラン,バルトと日本」と題する仏語講演(中国語への通訳〔逐語訳〕付)を行なった。6月には,近代考古学と文学とが交差する領域を専門的に研究しているパリ第4大学のソフィー,バッシュ教授と,また2008年3月には19世紀散文理論の専門家で,ロマン派作家の旅行記にも詳しいポワティエ大学のアンリ,セッピ教授と研究交流の機会を持ち,その成果をさらに発展させるために,上記二教授のほか,プルースト研究者でプルーストのヴェネツィア旅行の記述をめぐる文学的源泉に関して興味深い論考を発表しているフランス国立科学研究所研究員ナタリー,モーリャック氏を2008年10月に招聘して研究集会を催すための下準備を行なった。旅行記における文学創造と歴史や文化イデオロギーとの絡み合いの好個の例として,ロマン派のテクストではシャトープリアンの『パリからエルサレムへ,またエルサレムからパリへの旅程』(1811年)をモデル,ケースとして前代の客観的旅行記との比較で集中的に分析する方針,また世紀末から20世紀初頭の時期の考古学,民族誌学と文学との干渉現象の好個のモデルとして,とくにマスペロの『エジプトの廃墟と風景』(1910年)に注目する方針が固まった。
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