研究課題/領域番号 |
19320047
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
冨山 太佳夫 青山学院大学, 文学部, 教授 (70011377)
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研究分担者 |
川津 雅江 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (30278387)
大石 和欣 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (50348380)
梅垣 千尋 青山学院女子短期大学, 英文学科, 准教授 (40413059)
吉野 由利 一橋大学, 法学部, 准教授 (70377050)
山口 みどり 大東文化大学, 法学部, 准教授 (00384694)
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キーワード | 女性 / ジェンダー / 公共圏 / 言説 / セクシャリティ |
研究概要 |
本年度は、昨年度末にとりまとめた中間報告で問題になった点を解明すべく各担当に従って調査を進めた。問題になったのは、18世紀後半から19世紀前半にかけてのイギリスにおいて、社会の多様化や消費文化の進展、国外への帝国主義的覇権の伸長が起こった結果、イギリス国内に取り残された女性にとっても公共圏が複層的、複次元的に展開していったことである。「私/公」の境界線は、社会的に異なった立場に従って複層化していった。同じ女性であっても状況によって複数の境界線が存在し、意識されていたのであり、さらにはその境界線自体が明瞭なものではなく、曖昧なグレイ・ゾーンであったことである。家庭イデオロギーが19世紀初頭にかけて支配的になっていくのは明らかであるが、しかしその状況において女性たちは異なる「公/私」の境界線上を往還運動していたのである。その曖昧な境界線を、富山がJugen Habarmasの公共圏論への批判的考察、大石が女性と社交の問題をとりあげながら俯瞰的に考察をした。川津は、ジェンダー論として独身女性のケースを取り上げ、レズビアン女性たちの生活・服装の表象およびそこに隠された"public"への恐怖と不安を明らかにした。梅垣は、政治空間としてフランス革命論争を取り上げ、メアリ・ウルストンクラフト、ハナ・モア、エリザベス・ハミルトンの三者における「パブリック」への貢献をつまびらかにした。吉野はフランシス・バーニーおよびマライア・エッジワースを考察し、その作品中から浮かびあが得るナショナル・アイデンティティの構築と「公共圏」の可能性を吟味した。山口は、牧師の妻・子女を歴史的な観点から検討し、閉じ込められた空間の中から社会との接点を保っている19世紀前半の女性像を提示するにいたった。これらの研究は別冊の研究報告書に取りまとめ、平成23年度の出版を目指して編集していく予定である。
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