本研究は「視覚芸術をことばで語る」という営為にとりわけ注目して、その意味と機能を組織的に分析することを目的としてきた。計4年間の研究期間を2期に分け、前半では「20世紀フォトジャーナリズムにおけることばの機能」、後半では「近代日本美術批評の成立(岩村透を中心に)」を主な研究課題としたが、本年度はその最終年度にあたる。 本年度は「近代日本美術批評の成立」を完成すべく調査と執筆を続けてきた。すでに美術批評家・岩村透を中心に、厖大な資料踏査と整理を進め、執筆を並行してきた。 近代日本の美術批評を単に美術史的枠組みで捉えるのではなく、同時代文学や文学行政、初期社会主義、欧米における美術批評雑誌との連動-など、今まで未知の視点から捉える仕事に発展しており、当初の予想以上の規模になってきた。 本研究の最後には、後半テーマに関しての単著をまとめることを目標にしており、すでに出版社の企画出版としても承認されている。原稿用紙換算で1700枚にはなろうとする大規模なものであり、今年度までにその二分の一(750枚程度)の執筆は終えている段階である。 以上のように、この後半テーマがより発展する可能性を見せているため、本年度は別に、関連する研究課題が、科学研究費挑戦的萌芽研究にも申請採択されている。その双方を含む形で、近日中に、成果を-挙公開するべく進めている所である。なおかつ、本研究に関わる資料所蔵者との関係もあって、本研究に関しては、単行本で成果を一挙に公開することをめざしているため、すでに執筆原稿はかなりの量に達しているが、あえて今年度は論文および口頭発表を控えていることを申し添える。
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