本研究は4年間にわたって行われ、「視覚芸術を言葉で語る」という営為に注目しそれを総合的に研究した。本研究は前半・後半2年ずつ、別テーマを設定し、予期していた以上の成果を上げることができた。 前半2年間では「20世紀フォトジャーナリズムにおけることばの機能」をテーマとし、映像と言葉との関係を徹底的に分析した。成果は、『フォトリテラシー:報道写真と読む倫理』(中公新書、2008年)というかたちで公刊。一般読者にも広く還元できるよう努力し、幸いにも多くの反響を得ることができた。 後半2年間では「近代日本美術批評の成立」と題し、今度は美術批評と言葉の機能の連関に着目した。とりわけ美術批評家・岩村透に光を当てて研究した。これはその後、同時代文学や初期社会主義、文化行政、欧米美術界の動向など、まさに膨大な領域に属する問題であることが判明し、現在、別の刊行本(出版社企画決定済み)に成果を一挙に発表すべく、鋭意執筆中である(原稿予定枚数=400枚換算1700枚、現在約900枚執筆ずみ)。
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