研究課題/領域番号 |
19320053
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
|
研究分担者 |
石川 達夫 神戸大学, 大学院・国際文化学研究科, 教授 (00212845)
大平 陽一 天理大学, 国際文化学部, 准教授 (20169056)
阿部 賢一 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (90376814)
|
キーワード | プラハ / 亡命文化 / アヴァンギャルド / 多民族性 / 文化の交錯 / プラハ言語サークル / 墓地 / 文化表象 |
研究概要 |
最終年度に当る本年度は、これまでの研究成果をまとめるべく、7月31日~8月1日に科学研究費補助金・基盤研究A「ヴォルガ文化圏とその表象をめぐる総合的研究」との合同研究会を開催した。ここで本研究分担者からは大平陽一が「S・K・ノイマンとチェコ・アヴァンギャルド」と題して、両大戦間のチェコスロヴァキアにおける社会主義リアリズム陣営からのアヴァンギャルド攻撃について報告を行い、石川達夫が「プラーグ学派のロシア人--両大戦間チェコ文化の活況と多民族性」と題して、当時のチェコ文化の活況を「多民族性」の観点から説明しつつ、特にプラハ言語学サークルにおけるチェコ人、ロシア人の共同作業の意味について報告を行った。 そして、2010年3月にはこれまでの研究成果の集大成としてpdf版の研究成果報告書をつくって、研究代表者のホームページ(http://www.kinet-tv.ne.jp/~yisahaya/RUSSIAN_PRAGUE.pdf)に掲載した。研究代表者の諫早は「プラハのロシア詩人たち-「現代性」をめぐる論争」と題した論考を掲げ、プラハの亡命ロシア詩人たちと亡命作家ナボコフとの文学論争の底には、「現代性」をめぐる価値観の違いがあり、それはアヴァンギャルドの評価にもつながっていることを明らかにした。一方阿部は「オルシャヌィ墓地--その歴史と表象」と題した論考を寄せ、プラハの墓地を題材にして、それが複数の民族の記憶の痕跡をとどめ、プラハの都市文化の深層を知る上で重要なモニュメントであること解き明かした。また大平は「両大戦間期チェコの左翼文化内部とその分裂--プロレタリア文化・アヴァンギャルド・社会主義リアリズム」と題した論考の中で、両大戦間のチェコスロヴァキアにおけるアヴァンギャルドと社会主義リアリズムの論争において、ソヴィエトの文学理論の影響が色濃く表れていることを指摘している。さらに石川は研究会報告と同じ題名の論考を載せ、両大戦間のチェコ文化の活況を多民族性の観点から再検討している。 このように、本研究は両大戦間のプラハを舞台に、ロシア人、チェコ人、ユダヤ人などさまざまな民族が織りなした文化の活況を複眼的な視点から浮かび上がらせるという大きな成果を挙げることができたと自負している。
|