研究課題
今年度は、都合3回の調査を実施し、両足院に所蔵される書跡・典籍類のうち、第141箱から第160箱までの調査をほぼ終了した。調査方法は、箱ごとの悉皆調査であり、書名・員数・法量・装訂・外題・尾題・版式・行数・訓点・奥書・刊記などの調査項目を所定の調書に記入するものである。全体的には、江戸時代の仏典や漢籍の版本が中心であったが、今年度の調査の中で特に注目されるのは、第158箱に納められている『刻楮集・〓韈集等抜粋』(写本)43冊である。これは、天隠龍沢が瑞渓周鳳の『刻楮集』や某家の『〓韈集』等から要文などを抜粋したものであり、室町時代に書写されたものである。現在、木帙10冊、火帙9冊、金帙11冊、水帙13冊の43冊が確認されているが、抑も、当時の五山僧には、仏教辞典や禅宗辞典は云うに及ばず、漢詩や漢籍などをはじめとする中国文学や思想を簡便に調べ、それらの要文などを見ることの出来る中国百科辞典というような書物が必要とされたのである。五山僧の学識を支えたのがこのような書物であり、これらを手元に置きながら、漢詩などの文筆活動にいそしんだのである。今後、この『刻楮集・〓韈集等抜粋』(写本)43冊の内容についての精査が行われれば、更にその重要性が増すものと思われる。また調査済である第61箱から第120箱にかけての典籍類の書誌情報を採録した『建仁寺両足院に所蔵される五山文学関係典籍類の調査研究建仁寺両足院聖教目録II(第六一函~第一二〇函)』(330p)を、研究成果の中間報告書として印刷・作成した。
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