研究課題/領域番号 |
19320073
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
助川 泰彦 東北大学, 国際交流センター, 准教授 (70241560)
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研究分担者 |
吹原 豊 フェリス女学院大学, 留学生センター, 講師 (60434403)
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キーワード | インドネシア人 / 就労者 / 第二言語習得 / 日本語 / 動機 / 社会的ネットワーク / OPI / 心理的距離 |
研究概要 |
茨城県大洗町在住の約500名のミナハサ地方出身インドネシア人コミュニティを対象にして(1)日本語自然習得を促進する要因と(2)阻害する要因を調査する。また、アメリカ、オーストラリア等における同じ言語習得に関与する要因がホスト社会側にあるのか外国人自身に内在するのかを明らかにすることを目的として、同町において聞き取り調査と日本語能力の測定を行った。その結果、5年以上の長期間の滞在にも関わらず日本語口頭能力がOPIの初級下と初級中にとどまる者が8割近くであることが分かった。こうした外国人労働者客観的な日本語能力測定のデータを得られたことは日本語教育研究の分野では管見では初めての成果である。また、このように日本語習得が緩慢である原因について同町在住者および故郷のミナハサ地方において帰国した元労働者にインタビューを行って調査を行った結果、社会的ネットワークが大きく関与している可能性が浮かび上がってきた。この事実は1970年代にカリフォルニア大学のシューマン(J.Schumann)が主張した心理的距離と社会的距離が第二言語のピジン化をもたらすという仮説(ピジン化仮説)にも合致する結果であり、今後さらに調査を進めるための協力な根拠となった。同町におけるキリスト教会を中心としたゲマインシャフト的社会ネットワークは非常に協力であり、日本語ができなくとも生活には不自由しないという事実、心理的に日本人雇用者に対して距離感を抱いている者が多いという事実、いずれは帰国するから日本社会に統合するつもりはない者が多いという事実などが日本語習得を阻む要因と考えられるが、その一方で日本語が分かったほうが便利であり、生活の不安も解消されることを自覚しているものが多いことも分かった。
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