研究概要 |
平成19年度に収集した100人分のインドネシア人就労者の日本語OPIデータに基づき、日本語習得を促進する要因、および阻害する要因についての質的調査を進めた。促進要因については、100人中5人だけの中級レベル話者にインタビューを行った結果、ソーシャルネットワーキングが重要な要因であることが明らかになった。具体的には, 職場の同僚や上司との個人的な関係の構築や職場外での日本人との交流が日本語習得のきっかけになっていることが分かうた。また、職場内での食べ物のやり取りや行きつけの食堂での日本人店員からの挨拶のような些細な出来事が心理的距離感を縮め、日本人社会へ入り込もうという気持ちを引き起こし、日本語習得が促進されたケースがあることも分かった。 一方で阻害要因については滞在期間が5年以上の長期でありながら、日本語OPIレベルが初級下に留まっている5名にインタビューを行い、日本での生活実態と言語障壁の実態についての聞取りを行った。生活上で日本語の問題が深刻な場面は、医療サービスを受ける場合、子女の教育の問題、特に教師とのコミュニケーションの問題、および自動車購入やアパート契約などの場面など数多くあるが、教会メンバーや知人友人のネットワークを活用することでこうした困難を切り抜けている実態が明らかになった。また、日本人とのネットワークはほとんどなく、職場での最低限のコミュニケーションに限られていることが分かった。
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