在タイ日系企業で働くタイ人社員を対象に実施したアンケート調査から、タイ人社員が、日系企業で働くことに対して違和感・不満を感じる傾向があり、タイ式のやり方が受け入れられないことを問題視していることが分かった。 在中日系企業で働く日本人・中国人社員に実施したアンケート調査では、職場環境や社内コミュニケーションについて日本人と中国人の認識の差を明らかにし、その要因を探った。結果、中国人社員のほうが日本人社員より、コミュニケーションと職務遂行に問題を感じ、職場に不満を持っていた。管理職に対するインタビュー調査では、[日本人と中国人がともに働くこと]に対する認識を抽出し質的に分析した。管理職間では相互理解をしているが、日本人は中国人ワーカーを「自分のことしか考えない」と捉え、中国人管理職はワーカーが礼儀を身につけることが大切と認識していた。 在韓日系企業の韓国人社員と日本人社員を対象としたインタビュー調査では、両者が社内コミュニケーション上の問題をどう捉え対処しているかを探った。語られた問題は[言語][仕事][文化・価値観]の3種に分類できた。[言語]の問題として、韓日ともに話し方の違いが挙げられ、[仕事]上の問題では、韓国人社員から仕事の取り組み方や上下関係について多く言及された。[文化・価値観]の問題では、韓日ともに、相手の持つ偏見について語られ、感情の出し方やプライバシーへの言及があった。このような問題に対し、韓国人社員からは何らかの対処をしていることが語られた。 このような調査結果から、ビジネス日本語教育は日本語母語話者も対象として捉え直す必要があり、日本語教育が社員間の対話の促進に寄与すべきであることを提起した。また、本年度は、台湾での調査結果も含めた過去4年間の研究成果をまとめて報告書を作成し、調査協力先や関係者に配布して公開した。
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