本年度の主な国内・海外調査について報告する。 国内調査としては次の2点があげられる。「英語教師の研修と評価の新しい枠組みを求めて」と題するアンケート調査を全国の103教育委員会を対象として行った。回収数は32であった。この結果、更新講習の体系的運用とともに、教員の専門性基準の策定と研修・評価の新しい枠組み作りが、緊急の課題であることが確認された。「教員養成に関するアンケート調査」の対象は外国語(英語)の課程認定を受けている大学の英語科教育法担当者であった。439通を送付したところ、101通の回答を得た。その結果、英語科教育法の指導法の変化がみられた。小人数クラスで授業を展開し、指導案作成や模擬授業中心の実践的な指導法を身につけさせる傾向にあることが判明した。平成23年度から必修となる小学校英語活動の影響で、小学校英語教育に特化した科目の設置や、早期英語教育を重点分野とする大学の増加が顕著であった。 海外調査の主なものをあげる。「ヨーロッパ言語ポートフォリオ(ELP)」の現況の調査に、オーストリアのグラーツ市にあるヨーロッパ現代語センターに赴いた。ELPは、日本の言語教育政策の再検討を促し、外国語の教室に積極的な影響を与える可能性がある。全米外国語教育協会(ACTFL)の年次大会に出席し、日本への示唆を得た。協同的で多様な研修の機会を提供することの必要性や教員専門職基準に基づいた研修プログラムを開発することの重要性が浮かび上がった。米国アリゾナ州の北アリゾナ大学で指導教員(mentor)の調査を行った。初任者研修における指導教員の役割が明確となった。
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