研究分担者 |
杉森 直樹 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40216338)
FRASER Simon 広島大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (10403510)
古賀 友也 夙川学院短期大学, 児童教育学科, 准教授 (80321149)
川島 浩勝 長崎外国語大学, 外国語学科, 教授 (60259736)
池田 周 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50305497)
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研究概要 |
最終年度となる平成21年度は,前年度における英語心理動詞に関する成果を踏まえ,与格動詞(dative verbs)と二重他動詞(ditransitive verbs),非対格動詞(unaccusative verbs)と非能格動詞(unergative verbs)といった英語動詞のサブクラスを対象として自己組織化マップを援用して分析した。分析に利用したデータは,それぞれの動詞に関する文法性判断タスクに対する日本人英語学習者による反応であった。与格動詞・二重他動詞については,言語理論的に導かれる特徴を有する2つのクラスタが形成され,またそれぞれのクラスタに正しく位置づけられる動詞群があることが示された。さらに対象学習者の英語熟達度によって横断的に比較した場合,徐々にあるクラスタに集中していく過程が得られた。ただし,必ずしも正しいクラスタに位置づけられていくとは限らず,与格構文でforを伴って使用される動詞群は与格動詞と同じクラスタに位置づけられていく傾向も観測された。これら動詞は大きく他動詞に分類される動詞群であるが,今年度は分析対象を自動詞にも拡大した。一部の英語自動詞は非対格/非能格動詞に分類され,また非対格動詞は習得が難しいことが指摘されている。今回の分析では,まず「非対格動詞にのみ習得上の困難を抱えている学習者」が実際に存在し,かつ,それら学習者は非対格動詞を同じ特徴を持つクラスタに位置づけていること,を,自己組織化マップの援用により確認しようとした。その結果,明確に「非対格動詞にのみ」習得上の困難を抱えている,と考えられる学習者は抽出できず,また,理論的な「非対格/非能格」という区分も観察されなかった。 これらの研究は,日本人英語学習者が持つ心内辞書のネットワーク構造を把握し視覚的に提示するツールの開発の基礎研究としての意義を持つ。また,得られた知見は,心内辞書のネットワーク構造を把握するにあたり,学習者の言語使用実態に立脚したモデル構築が必要であることを示唆している。
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