研究課題
本年度は、前年度に引き続き、二ヶ月に一回程度の研究会を開催し、分担者による個別研究の報告が行われたほか、その報告の準備のために、国内のみならず韓国や中国における文書・石刻等の実地調査を実施した。これらの研究会での報告は、それぞれ個別論文として公表(研究発表参照)ないし公表予定である。平成21年10月13日に開催された国際ワークショップップ「文書のかたち」は、昨年に引き続き日中韓三国の前近代の文書史科について、三国の研究者の相互理解と分析手法の開発・深化を目指して開かれたが、特に今回は、三国において文書の観察を実践している方々を招き、「文書」の形態に焦点を当てた報告を揃えた。国立扶余博物館の李鎔賢氏からは、氏自らが解読に当たった百済木簡の報告があり、形態に着目しつつ日韓を比較した議論が交わされた。韓国学中央研究院の沈泳渙氏の「高麗時代の中書門下牒の可能性」は、唐代中書門下牒の形態の特異性や元代の勅類に到るまでの変遷を踏まえ、高麗に中書門下牒というべき文書が存在したことを証した。中国社会科学院の劉暁氏の報告「元代道教公文書初探」は、石刻資料研究の最新の成果が盛り込みつつ監督官庁・道観の文書処理システムを明らかにし、北海道大学の橋本雄氏の「勘合のかたち」は、陳述史料を用いた文書形態研究のモデルを示すもので、文書の保存と活用とが形態論に及ぼす影響にまで注意が喚起された点も注目に値する。朝鮮王朝時代に置かれていた「倭館」を巡って、九州大学の岩崎義則氏から「館主日記」の伝来論についての研究報告があり、その「館主日記」を用いた紛争処理研究の一例がソウル大学校の金?廷氏より報告されるなど、当該日記を用いた研究の幅の広がりを予期させるものがあった。以上、本国際ワークショツプは、文書史料分析法の多様性が示され、それは素材とする文書残存の状況の多様性に対応するものであり、ひいてはこれまでの研究史の多様性にも拘束されることが示されたとともに、しかしながら国際的、あるいは通時代的対話が十分に可能であり、その成果も豊穣であることが予感された点において大きな成果が上がったと評価できる。この他、北部九州地域新出土木簡や韓国古代出土木簡、更には中国出土木簡の釈読研討会などを通じて、古代東アジア世界における木簡の形態の相互比較研究に取り組み、また前記三国における文書研究の文献目録については、中国の宋代以後、日本中世、朝鮮前近代の部分がほぼ揃い、最終年度における完成への目途が立つ状況となった。
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東アジア世界史研究センター年報 4
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知識は東アジアの海を渡った-学習院大学コレクションの世界-
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第2期日韓歴史共同研究報告書 1
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