研究課題
3年計画の最終年にあたる平成21年度は、前年度に引き続き研究分担者による個別研究の推進をはかると共に、イギリスの事例と他の地域の比較を充実させるという方針に沿って研究会を組織し、研究の総合と報告書のとりまとめへ向けて作業を進めた。具体的には、2009年9月に開催した全体研究会で、光永雅明がJ・S・ミルの社会思想における多元社会観と寛容の限界について、南川文里が1920年代における在米日系移民を「包摂と排除」をキー概念として分析した。ついで、2009年12月に行った全体研究会では、中川順子が近世イングランドへの外国人移民の帰化問題を取り上げ、その法的な地位について議論を展開した。討論では、同時期のハプスブルク支配領域といった大陸の事情、もしくは20世紀の合衆国の事情などとの比較が議論の焦点となり、当該問題の重要性を再確認するとともに、その今日的な意味にまで議論が及んだ。その他、研究分担者の個別研究活動としては、山之内克子が、18世紀ドイツ啓蒙思想家の視点から見た多文化的都市ウィーンの姿を明らかにし、戸渡文子が世紀転換期イギリスにおける老人に関わる問題(老齢年金)を取り上げた。並河洋子は、ミドルクラスの反奴隷制運動と日曜学校運動への関わりから、異なる人種や階層の人びとを社会の中にどのように位置づけようとしていたのかについて検討した。水谷智はイギリス植民地における人種秩序の問題を白人系孤児の観点から分析し、指昭博は近世イングランドにおける宗教マイノリティであるカトリックと体制社会との共存の在り方を、18世紀の記録から考察した。最後に、研究の総括として、これらの個別研究の成果を報告書としてまとめる作業を行った。
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社会科学(同志社大学人文科学研究所) 86
ページ: 11-37
International Journal of Anglo Indian Studies 10(HTML形式)
識字と読書-リテラシーの比較社会史(山之内克子「啓蒙期パンフレットとその読者層-『ウィーンの小間使い娘』を中心に」)(昭和堂)
ページ: 360(156-184)
理論と動態 2
ページ: 3-17
西洋史学(日本西洋史学会) 236
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社会科学(同志社大学人文科学研究所) 85
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Zinbun(京都大学人文科学研究所) 41
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