研究概要 |
都市の特定地区に女性を「商品化」する空間が存在してきたことを問題視し,ジェンダー関係をはじめ,さまざまな権力関係が都市空間においてどのように作用し,それらの諸関係がいかに都市空間に刻まれ,また,そこに出現するのかを検証することが,本研究全体の目的である。研究対象には米軍基地周辺の遊興街を選定し,女性が「商品化」される空間がどのようにつくりだされたのかを,社会・歴史地理的な視点から明らかにしつつ,基地や売春をめぐる住民運動の展開にも注目する。 上記の本研究全体の目的を踏まえ,本年度は以下のような研究成果を得た。吉田は,金武町(沖縄県)を事例に米軍基地周辺歓楽街の形成とその変容を明らかにし,研究成果をまとめた。また,呉市と岩国市で現地調査を行い,基地周辺歓楽街の形成および売春への行政の対応に関する資料を得た。中島は,名護市辺野古の米軍海上基地建設予定地を事例に研究を行っており,反対運動の歴史的過程や現状を明らかにしつつ,基地建設予定地周辺の環境保護をめぐる反対運動と地域住民との関係を明らかにした。加藤は,本研究の主題である権力関係の解明にとって近代的な都市空間編成における遊廓の位置づけを明確にすることが,戦後への展開も含めて必要となることから,近代以降に重点を移して調査・研究を続けている。さらに,米軍統治下における沖縄を事例に,基地周辺歓楽街の分析から,軍政府・民政府の施策・方針の特徴を明らかにし,本土とは異なる空間の生産過程があることを確認するに至った。神田は,遊興空間の消費と観光の関係性について米軍との関係に注目して検討しており,ソウル,那覇市,白浜町(和歌山県),横須賀市で現地調査を行った。特に米軍駐留前後の変化に焦点を当て,その状況を確認した。以上の研究活動の結果,本年度の成果として,雑誌論文1(研究報告),学会発表4(国際学会1,国内の学会3),図書1(単著)を得た。
|