東フジア諸国、とくに香港、台湾、シンガポールでは、高齢者の生活がインドネシア、フィリピンなど海外からの家事・介護女性労働者に多くを依存していることが特徴である。その実態を把握すべく、伊藤はシンガポールおよび香港においてインドネシア人家事・介護労働者、外国人労働者支援団体とコンタクトをとり、聞き取り調査をおこなった。その結果、家事介護労働者と高齢者の関係構築においては、国によって外国人労働者受け入れ条件が大きく異なること、外国人労働者側の要望として休暇日の取得がもっとも多いにも関わらず、その要望を満たしているのは、香港のみであることが判明した。またインドネシアでの調査により、ジャワ、スマトラを中心に女子労働者のリクルートが組織化されており、インドネシアの外資獲得においても家事介護労働者による海外送金への依存度が急速に高まっていることが判明した。 連携研究者のおもな研究概要は次の通りである。渡邊は、台湾高雄市・屏東県において都市部の高齢者生活についての補充調査をおこなった。高桑は、沖縄県石垣市の北部地区と竹富町鳩間の調査データの分析、さらに南日本ならびに南西諸島の高齢者組織に関する文献研究を実施するなかで沖縄社会の独自性を確認し、報告書執筆に向けて研究のもとめを行った。鄭は、ソウル市中心部に位置する宗廟市民公園に参集する4000人もの高齢男性たちの存在について、旧態依然とした男女区分と急速な高齢化が生み出したものとして分析し、報告した。何は、北京や上海を中心として、老人生活への社会的対応のあり方を系統的に跡づけ、その資料整理をおこなった。綾部は、タイ・チェンマイ地域で有識者、相対的富裕層から高齢者問題に関する聞き取りを行ったほか、チェンマイ市内諸機関における資料収集、バンコク市内諸機関における資料収集にも従事した。
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