研究概要 |
本年度は、本研究費による全研究計画新制度派理論が日本およびベルギーの司法制度改革史を分析するためにいかなる射程と効用を有しているかを確認するべく、分担者、研究協力者による検討研究会を計4回行った。まず2007年7月25日にLaw and Society Association Annual Meetingがベルリンで開かれた際に併せて、尾崎、濱野、高橋、ヴァンオーヴェルベケで、研究の進展状況を確認しあった。これを承けて同10月27日に、立教大学にて、尾崎、濱野、高橋、越智で、Choi & Rokumoto(eds.), Judicial System Transformation in the Globalizing World, Seoul National University Press,2007に尾崎、濱野、高橋がそれぞれ寄稿した論文の相互批評の形で、司法制度改革研究の射程を再確認した。さらに2008年2月11日に立教大学で、尾崎、濱野により再度研究状況の確認と今後の計画について協議した。最後に、2008年3月21日に、ルーヴァン大学で開催されたThird International Seminar on the Dynamics of Law and Society in Europe and Japanにて、尾崎、濱野、高橋はそれぞれ司法制度改革の社会経済的背景、法曹人口、裁判所制度改革について現状と課題について、ヴァンオーヴェルベケとマースヒャルクは裁判員制度(陪審制度)導入についての比較法的考察について、報告、検討を行った。 これらの作業により、司法制度改革研究における新制度派理論の長短について一定の見通しを得た。長所はやはり長期的変動と短期的変動を総合的に把握する理論への途が開かれることであり、短所は変化の動因の説明においてトートロジーに陥る可能性があるということである。これらの実績をふまえ、来年度はさらに各論的研究に取り組むことになる。
|