1.本研究は、法社会学・法史学・犯罪学専攻の研究者の学際的・総合的な共同研究を通じて、19世紀から現代に至るヨーロッパ各国の司法統計(組織統計・訴訟統計・犯罪統計等)を系統的・包括的に整理・分析することを目的とする。3年間の研究の最終年度である2009年度には、過去2年間の共同研究の進捗を踏まえ、次の研究成果をまとめた。 2.フランス・イギリス・ドイツ・イタリアのヨーロッパ4カ国に比較のために日本を加えた5カ国の司法統計の19世紀以降現在に至る歴史的・内容的変遷を詳細に整理・解明した研究の成果を、『ヨーロッパの司法統計I:フランス・イギリス』および『ヨーロッパの司法統計II:ドイツ・イタリア・日本』として刊行した。ヨーロッパの司法統計の歴史的・内容的詳細を包括的に明らかにした研究書としては日本で最初のものであり、その学術的意義は大きい。 3.ヨーロッパ各国の司法統計を対象に、法社会学的・法史学的考察を加え、司法統計を通じて各国の「法と社会」の展開およびその特徴を明らかにする研究を行った。イギリス、イタリア、ドイツについて具体的な研究成果がまとまり、その内容は近く発表の予定である。この研究は、司法統計がその収録データ(数値)の点で利用価値があるにとどまらず、司法統計の成り立ちや発展そのものが各国・各時代の社会・法制度・法学のあり方と緊密に結びついたものであることを解明した点で、司法統計研究に新しい可能性を開く意義を持つ。
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