研究課題
最終年度にあたる平成21年度の研究実績の概要は以下の通りである。第一に、上演対象の法廷弁論事件として、古代ローマでは「カエキーナ事件(紀元前69年)」、古代ギリシアでは「バグニアス相続事件(紀元前360-40年頃)」を選定した。前者はキケロー作『カエキーナ(Caecina)弁護論』、後者はイサイオス作弁論11『バグニアス(Hagnias)相続財産について』およびデモステネス弁論43(偽作説あり)『マカルタトス(Macartatos)論駁弁論』から再構成するものである。第二に、本科学研究費の当初計画には実験的上演も含まれていた。しかし予算の制約から今回は断念し、その準備としてシナリオ作成に着手した。シナリオ作成上の主な問題点として、「カエキーナ事件」については、当該土地の占有をめぐる状態を両当事者がどのように対立的にスピーチで描写するか(証人の宣誓や証言も含む)という「事実問題」、それと密接に絡んで「特示命令」法文の再構成という「法律問題」に取り組んだ。一方、「バグニアス相続事件」でも、「カエキーナ事件」を考慮して、相続財産の占有(利用)問題および相続順位法文等の再構成に焦点を絞ってシナリオ作成を試みることにした。特に、残存する法廷弁論作品は当事者にとって有利に「粉飾された事実(即ちウソ)」を記述しているという仮説を極限まで詰めてシナリオを構成するものである。これらのシナリオと問題点については平成22年5月末開催の法制史学会(於東北大学)で報告する。第三に、古代ギリシア・ローマ法の専門家以外の研究メンバーは、各人の専門分野で同種の問題点に注目し、例えば、日本中世法制史では、「訴状」と「陳状」の再構成、フランス近世法制史では、一種のローレポートである「アレティスト(arretist)資料」による裁判の再構成に着手した。
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