平成21年度は、カナダ、イギリス、デンマーク及びスペインを中心に調査を行った。 まず、プライベート・セクターである会計基準設定主体が公表した会計基準を会社法及び証券法上認知している点で、カナダは、先進国といわれる国の中でおそらく唯一の国であるが、カナダにおいても、その合憲性が争われたこと、議会において議論があったことなどが明らかになった。また、スペインは、経済産業省に設けられた委員会に会計基準設定が委ねられているが、その委任の範囲をめぐって裁判上合憲性が争われたことがあり、また、プライベート・セクターが公表した会計基準は商慣習として法律の解釈上、位置づけられていることが判明した。デンマークにおいては、プライベード・セクターである会計基準設定主体が会計基準を公表しているが、そのエンフォースメントは、証券取引所の上場規則によって行われていることが判明した。 イギリスについては、従来から、一定の範囲では研究されてきたものの、立法者は、巧みに会計基準の法的効力を定めることを回避し、他方、裁判上は、徐々に受容されてきたものの、会計基準違反を理由として損害賠償請求等を認めた裁判例はほとんどなく、「真実かつ公正な概観」の解釈との関係で議論されてきた。もっとも、最近では、裁判所は会計基準を尊重する姿勢を示している。 さらに、ベルギーについても調査し、ベルギーにおいては、パブリックセクターである会計基準設定主体が会計基準を開発しているにもかかわらず、その会計基準の法的拘束力は認められていないことが明らかになった。
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