本年度は、外交・安全保障政策担当スタッフの外交観と外交政策との関係について考察した。オバマ政権は内政だけでなく外交においても、きわめて深刻な課題に数多く直面している。政権発足以来、イラクやアフガニスタンばかりでなく、北朝鮮、イラン、イスラエル・パレスティナ関係、あるいはパキスタンの動向など、さまざまな課題への対応に追われている。こうしたオバマ政権の外交政策は、政策担当者のもつ外交観やイデオロギーによってかなりの程度特徴づけられている。現時点では、オバマ政権の外交・安全保障政策担当スタッフは、民主党のもっとも左の勢力、すなわち左派・反戦派を基本的に除外し、中道派を柱とし、なおかつロバート・ゲーツやブレント・スコウクロフトら共和党系穏健派ないしリアリストにも幅を広げようとしているように見える。こうした政策担当者の外交観やイデオロギーは、個別の政策のみならず、オバマ政権と民主党のイデオロギー的立場にも少なからぬ影響を与えている。今後はこうした視角から、アジア・中東関係、核不拡散などの政策についても分析を深めていきたい。さらに本年度は、保守系団体と共和党の関係に焦点をあて、共和党の保守化がどのようなメカニズムで進行しているかについて考察した。とくに経済保守団体であるClub for Growthが共和党の予備選挙にどのように介入し、また影響を及ぼしたかについて研究を進めた。2009年以降の新しい現象として、Tea Partyと称する右派グループと共和党の関係が、さまざまな政策分野で急速に影響力を高めている。今後はこうした新たな団体も射程に入れながら研究を進め、その上でこれまで得られた知見の理論化に取り組みたい。
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