本研究は、先進デモクラシー諸国の経済政策形成過程における専門性の役割を解明することを目的としている。すなわち、(1)デモクラシーはいかにして専門家を受け入れるのか、(2)専門性は、どのようなエージェントや制度によって政策形成過程に組み込まれているか、(3)専門性はいかなる政治的意義を有するか、といった諸問題について、通時的比較(時系列的歴史的な発展と変容)と共時的比較(地域横断的比較)を組み合わせることによって検討を加えることとしている。 21年度は、昨年度に引き続き、研究代表者・連携研究者が各自のテーマに関する実証研究を行うと同時に、それらから得られた知見に基づき、専門性概念について再検討を加えた。具体的には、各自対象領域の調査とその理論的分析を進めると共に、夏以降その成果を研究会で共有し、さらに「専門性」「専門家」という概念についての議論を深化させた。また、専門家の利害と選好についても議論を行い、各自が実施してきた研究を統合する分析枠組みを検討した。 各自の実証研究については、研究代表者である高橋直樹のとりまとめの下、これまでの研究成果として叢書を刊行する計画のもとに、内山が日英の経済政策形成と専門性、伊藤武がイタリア戦後体制の形成とテクノクラート政治、藤田が医薬品規制行政における専門性、杉之原が専門家の国際的ネットワークと日米緊急交渉、川嶋がEUの政策過程における民主主義的正統性の確保と専門性、高橋が英国ブレア政権における専門家の役割とデモクラシーについて、研究を進めた。
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