本研究の目的は、1)フィリップス曲線の形状に影響を及ぼす要因を実証的に特定し、2)労働市場のミクロ的構造とフィリップス曲線の形状の関係を説明する理論モデルの構築することである。1)については、労働組合の交渉力・失業保険給付制度の寛容さ・解雇の困難さ・転職の容易さなど、労働市場の特性に注意しながら各国のフィリップス曲線を比較対照し、その形状に強い影響を及ぼす労働市場の構造要因を実証的に特定する。2)については、1)の実証研究の分析結果を踏まえて、各国の失業率とインフレ率の関係を包括的に分析できる(=各国のフィリップス曲線を特殊ケースとして表現できる)ような失業の動学モデルを構築する。さらに、このモデルを使って(必要に応じてシミュレーションも行って)、金融政策を使って失業率を低下させることは可能か、また可能な場合、そうすることは資源配分の観点から望ましいかどうかを検討する。
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