• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2007 年度 実績報告書

オークション制度設計の行動経済学からの新提案-市場と人間性の理論・実験分析

研究課題

研究課題/領域番号 19330041
研究機関信州大学

研究代表者

西村 直子  信州大学, 経済学部, 教授 (30218200)

研究分担者 西條 辰義  大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (20205628)
キーワードオークション / 実験経済学 / 経済理論 / 制度設計 / 行動経済学
研究概要

本研究の目的は、これまでのオークション理論に,非利己的主体を取り入れ,理論を発展拡張させ,それを実験で検証することである。伝統的経済学では,自分の利得の増加だけに専心し,他人の利得状況には無頓着である,「利己的」人間像が,合理的経済主体のモデルとして考えられてきた。しかし,最後通牒ゲームなど「非市場」場面における近年の実験研究では,「利己的」モデルでは説明がつかない法則性を持った行動が確認されており,その中にはいくつかの社会的関係性を重視したパターンが考えられている。
H19年度の本研究においては,その非利己的パターンの中から,相手の利得を下げてほくそえむ「スパイト」的主体と,相手の意図に反応して必要があれば報復する互恵的主体の,2種類を考えることから始めた。既存理論によれば,1単位商品を取引するタイプのオークションには4つの基本形があり,それが互いに同値であることが知られている。非利己的主体の存在を導入することにより,これらの同値性が崩壊する可能性があることを示すことからスタートした。
まず,この基本形のうち「競り」方式と「第2価格入札」方式をとりあげ,非利己的な買い手が2人いるSimple Caseで理論分析を行った。その結果,上記2種類のタイプの主体がいる場合には,この2つの基本形は同値性を失うことを示した。しかし,否定的な内容ばかりではない。完全情報の下では,利己的主体を前提とした既存理論の下で「第2価格入札」方式に存在した非効率な均衡は,非利己的主体を前提とすることによって消滅した。さらに,2つのオークション方式の両方で,効率的な均衡の領域が縮小され,資源配分結果の予測精度が高まることがわかった。ただ,上記2つ種類の非利己的主体のタイプでは,均衡の場所が異なる。一方,不完全情報の下では,スパイト的主体の均衡戦略は,商品価値より高い入札をすることになるが,互恵的主体の均衡戦略は商品価値どおりの入札を示し,大きな隔たりがある。来年度以降は,3人以上の買い手がいるケースへの拡張,および他の基本方式について分析を進めることとなる。
実験分析では,上記理論仮説のうち,互恵的主体と整合的な仮説をサポートする傾向を見た。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2007 その他

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Spite and Counter-Spite in Auctions2007

    • 著者名/発表者名
      西村直子・西條辰義・T. Cason
    • 雑誌名

      Staff Paper Series 07-08, Faculty of Economics, Shinshu University

      ページ: 1-66

  • [雑誌論文] 「意図」が織り成す市場-報恩と報復の経済行動2007

    • 著者名/発表者名
      西村 直子
    • 雑誌名

      西條辰義編『実験経済学への招待』NTT出版

      ページ: 30-54

  • [雑誌論文] 市場競争と経済心理学2007

    • 著者名/発表者名
      西村 直子
    • 雑誌名

      子安増生・西村和雄編『経済心理学のすすめ』有斐閣

      ページ: 91-112

  • [雑誌論文] 見えざる意図2007

    • 著者名/発表者名
      西村 直子
    • 雑誌名

      『経済セミナー増刊/ゲーム理論プラス』日本評論社

      ページ: 88-91

  • [学会発表] Spite in Auctions2007

    • 著者名/発表者名
      西村直子
    • 学会等名
      特定領域サマープログラム
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      2007-11-23
  • [備考] 論文リストにあるStaff Paperは,以下のURLに掲載されている。

    • URL

      http://www.econ.shinshu-u.ac.jp/research/b_d_s/index.html#02

URL: 

公開日: 2010-02-04   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi