20世紀イギリスの経済社会改良思想を、ニュー・リベラリズムの思想の形成、展開、変質、外観的消失、そしてニュー・レイバーによる再生を基軸に動的展開過程として跡づけ、再構成し、再評価することが、本研究の基本的な研究目的である。 すなわち、まず主に古典派経済学とH.スペンサーの社会進化論を再検討し、古典的自由主義からニュー・リベラリズムの形成への過程を断絶と連続の関係において解明する。さらに、この形成されたニュー・リベラリズムの経済社会改良思想の戦間期までの展開をたどり、その政策・制度デザインの特徴を自由帝国主義、キリスト教社会主義およびケンブリッジ経済学派との対比で描き出す。 加えてケインズ経済学を確率革命との関連で捉えなおし、それとニュー・リベラリズムの関係を新たに解明する。加えて、ウェッブ夫妻に端を発するLSEの行政学的経済社会改良思想を戦後のファイナーやロブソンらの仕事に拠りつつ取り上げ、戦後のニュー・リベラリズムの思想の具体的様態を明確にする。 最後に、1970年代のニュー・ライトの経済思想に基づく経済社会の見直しが逆にニュー・レイバーによるニュー・リベラリズムの思想的伝統を現代の諸変化のなかで再生させたことを明らかにする。こうして、ニュー・リベラリズムの思想的伝統を20世紀イギリスの経済社会改良思想を貫く思想原理として改めて検証する。
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