政府の各種政策は、その立案過程の合理性とその政策結果の評価が、より一層求められるようになってきた。文化政策については、従来、文化価値を扱うために、統計的数量分析が難しいと考えられておりその統計の政府統計としての体系的整備も十分に行われて来たとは言い難い。この欠点を補うために、現行の政府の文化芸術行政のための基礎的統計データの整備を目的としている。そのために、本研究は(1)芸術文化の供給がどのような構造を持っておりそれと文化政策に必要な統計データ体系のシステムを供給者の視点から設計検討する。更に(2)その芸術文化の担い手としての供給サイドは、単一体ではなく、芸術家をはじめとする個人では、業主的な存在と被雇用者的な者とがあり、団体もまた、法人格を持つものとそうでないものとがある。しかも事業主体としては極めて不安定な存在として、事業単位毎に、ちょうど建設業におけるコンソシアムのような企業構造を持っている。従って、そこで従事する人たちは極めて入り組んだ形で派遣出向、外注等の関係で営まれていることなどを視野に入れて構造を分析する。更に事態を複雑にしているのは、(3)文化産業従事者が、その仕事で十分な生計を立てるのが実態的に難しく、そのためにこうした人々の生計を支えるのが世帯の他の構成員であることが多い。こうした点を実証するのが研究目的である。
|