研究概要 |
産業レベルの分析については,日本,韓国,中国,香港,台湾,マレーシア,シンガポールの7力国においてエレクトロニクス製品に関する生産統計の収集を行い,更に貿易統計によって,これらの国に加えて北米,欧州,その他の地域とのリンケージを明らかにするためのデータベースの作成を行った。今年度はデータベースがほぼ完成した状況であり,分析には取りかかれていない状況であるが,貿易統計による予備的な分析の結果,エレクトロニクス製品の生産リンケージは日米欧3極構造から,韓国や台湾などの新興国も含めた多極構造に複雑化していることが分かった。 企業レベル分析については,日米欧の約20の代表的なエレクトロニクスメーカーを抽出し,財務諸表や特許データを用いた分析を行った。その結果,日本の総合エレクトロニクス企業は総じて利益率が低く,その背景として事業の選択と集中が行われていないことが影響していることがわかった。事業分野ごとの規模の経済性を測定したところ,特に電子デバイス分野において大きいことがわかり,当該分野において国際競争において優位に立つためには選択と集中により規模の経済性を確保することが必要であるといえる。また,特許データや研究開発データを用いた分析によると,日本企業においては特許の生産性(特許/研究開発費)は高いが,当該特許が事業価値に与える影響が小さいことがわかった。これでは公開データを用いた上場企業に対する分析に留まっているが,今後は企業活動基本調査など,非公開企業も含めたデータを用いて,より計量経済学的にリジットな方法を用いた分析を進めていく予定である。
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