本研究においては、日本のエレクトロニクス企業の国際競争力を(1)産業レベル分析と(2)企業レベル分析の両面から評価することを目的としている。 (1)については、日本、韓国、台湾、中国など東アジア諸国にフォーカスしたエレクトロニクスに関する詳細な品目別の生産・貿易に関する国際データベースを構築した。また、このデータベースを用いた東アジアのエレクトロニクス産業に関する計量モデルの概念設計を行った。当該計量モデルにおいては、(1)各国のエレクトロニクスに関する最終製品(コンピュータや通信機械など)の需要関数の推計、(2)最終需要から派生需要として発生する電子部品の推計、(3)日本企業の韓国や中国企業に対する相対的な競争力から日本企業の製品別シェアの推計の3段階のモデルによって、日本企業の中長期的な製品戦略について検討するためのシミュレーションを行う。 (2)については、財務諸表と特許データを接続した企業レベルデータベースを構築し、日本のエレクトロニクス企業の国際競争力を評価することを目的とする。平成20年度については、特許データベースの作成(特許庁における整理標準化データ、世界のデータベースであるPATSTATなどを統合したもの)を行うとともに、これらのデータをCompustatなどの企業財務データと接続して、日本企業の技術戦略(特許活動)と製品戦略(セグメント別財務データ)の関係に関する分析を行った。その結果、日本の総合電機メーカーは90年代後半以降、事業分野において「選択と集中」を行ってきているものの、研究開発については幅広い分野において行っていることが分かった。技術の多角化とパフォーマンスについては、その事業分野によって異なり、例えば家電分野と電子部品にように対応する技術分野の相関性が高い分野において多角化を行っている企業においてすぐれたパフォーマンスをあげていることが分かった。
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