利は、地域統合の影響を(a)関税撤廃、(b)貿易円滑化、(c)輸出対GDP比率の増加による生産性の上昇、(d)競争の促進による商業・運輸マージン率の減少の4つの要因に分け、昨年度に構築した動学的CGEモデルを使用して定量化した。東アジアにおける地域統合については、関税撤廃よりも、貿易円滑化及び競争の促進による商業・運輸マージン率の減少の経済厚生への影響が大きいことが実証された。輸出対GDP比率の増加による生産性の上昇はメンバー国によって大きく異なるが、中国が地域統合により最も生産性上昇の恩恵を受けることが示された。現在、労働の国際移動を内生化したモデルを構築中であり、来年度は、労働の国際移動が可能なシナリオの下で、地域統合の影響を推計する予定である。 大槻は基準認証と貿易の関係を16途上国の企業レベルデータを用いて計量分析を行った。結果として、基準により貿易障壁となるものと貿易を促進するものがあることが分かった。例えば、品質に関する基準は貿易障壁となり、多国間の相互認証は貿易を促進することが分かった。また、農業と工業でも違いがあることが示された。 今年度は、フランス・ナント大学よりロバート・オーウェン教授を招へいし、「欧州における地域統合」の研究会を開催し、欧州と東アジアにおける地域統合の相違点のディスカッションを行った。来年度は、海外共同研究者(世界銀行ドミニク・ヴァンダー・メンズブルグ氏及びジョンズ・ホプキンス大学大学マイケル・プラマー教授)の協力を得て、欧州と東アジアの比較研究を行う予定である。
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