研究課題/領域番号 |
19330050
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
利 博友 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 教授 (40283460)
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研究分担者 |
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90265918)
大槻 恒裕 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 准教授 (40397633)
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キーワード | 地域統合 / 貿易協定 / 国際的生産・流通ネットワーク / 貿易円滑化 / CGEモデル / 東アジア / EU |
研究概要 |
東アジアにおける地域統合については、EUのように関税同盟を設立するよりも開かれた地域を推進する方が、メンバー国に、より大きな恩恵をもたらすことが示された。ASEAN経済共同体の経済効果について、動学的CGEモデルを使用し推計した結果、(1) 通関手続の簡素化・迅速化等による行政障壁の低下及び(2) 競争促進とインフラ改善による商業・運輸マージン率の減少が、関税撤廃よりもメンバー国の経済厚生への影響が大きいことが明らかにされた。一方、EU拡大は、中国・ASEAN諸国の繊維・衣類の輸出にマイナスの影響を及ぼすが、東アジア諸国の経済厚生への影響は極めて小さいことが示された。 今年度は、東アジア固有の発展を遂げている国際的生産ネットワークと地域統合の関係についての理論・実証研究もさらに推し進めた。「事実上の(de facto)」経済統合と「政策面の(de jure)」経済統合の間の相互フィードバックが東アジア経済統合の特徴となっている点に着目し、欧州と東アジアの比較研究においては東アジア特有の性格をモデルに適切に盛り込んでいくべきであることを明らかにした。 また、東アジアの経済統合が外に開かれたFTA網の形で展開されている点も、欧州の経済統合の道筋と異なっており、それをどのように経済効果の評価と関連づけていくのかについて、議論を進めた。 最後に、拡大EUにおける共通農業政策(CAP)の生産効率性に与える影響を1975~2005年のEU27ヵ国のパネルデータを用いて推計した。その結果、この期間に緩やかな技術進歩が見られる一方、技術的効率性は低下しており、CAPが効率性の低下を引き起こしている一因であることが分かった。故に、EU拡大におけるCAPの継続は加盟国の財政支出をさらに増大させるため、モラルハザードを誘発しない新たな手法の導入が必要であることが示された。
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