研究概要 |
(1) 国際寡占モデルの下で,企業がR&D投資を行ない,R&Dスピルオーバーが発生するときのR&D投資戦略と輸出量及び政府の最適貿易政策を分析し,先行研究成果と異なる結果を導くことができた.それをまとめた論文はJITE誌に受理された.更に,費用削減型R&D投資が行なわれるとき,自由参入均衡と次善最適均衡における企業数の比較を行ない,新たな研究結果を得ることが出来た.この成果は『イノベーション,R&Dスピルオーバーと寡占』(岡山大学経済学部研究叢書)の中に収められた.(2) 前年度に分析を行った,三国間の研究開発競争と政策的支援に関する研究成果を複数の研究会で報告した.出席者のコメントに基づいて分析の改良と拡張を行い,既存研究での二国間ケースとは政策的な処方箋の異なる場合があることを明らかにした.また国際間の技術スピルオーバーに関して前年度に行った予備的分析を踏まえて,特許引用データによって捉えることができるR&Dスピルオーバーと貿易パターンの関係を検証するための理論分析を行った.そして貿易パターン(水平・垂直的産業内)によってR&Dスピルオーバーの方向や程度が異なるという理論的予測が得られた.(3) 中国企業のイノベーション実態調査ためのアンケートを実施(約240社から回答)した.そして中国民営企業の経営環境,イノベーションの投入状況と成果,新技術取得の経路及び技術者の人事管理に関するデータの整理と分析を実施.加えて世界貿易上位50力国の貿易データに基づき,貿易構造への技術スピルオーバーの影響分析を行なった.(4) 中国企業のイノベーション活動と技術者め人材管理に関するヒアリング調査結果を整理した.そしてアンケート調査を基に,中国における外資系企業のイノベーション活動と技術者の人材管理との比較から中国企業のイノベーション活動の特徴,そして企業の研究開発活動を担う技術者の能力開発について分析を行い,論文を完成させた.
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