第一に、平成19年度の研究で構築した、道路の需要予測と整合的な便益評価理論モデルの原形をさらに発展させて、実務に応用しうる形に拡張し、その成果を平成20年6月にパリで行われた国際学会Third International Conference on Funding Transport Infrastructureで発表した。 第二に、交通インフラの建設費用を誰がどのように負担するのが望ましいかに関して理論分析を行い、Revenue-recycling within Transport Networksというディスカッションペーパーにまとめた。ここでは、既存研究と異なり、道路に対する課金で、並行して走る鉄道に投資することを明示的に考慮し、これまでの知見とは異なる結果を導き出している。 第三に、上記二つのテーマを考える際の前提となる、費用便益分析の基礎的な考え方について、日本の状況を考慮しながら概要をまとめた。この成果は、「交通投資の費用便益分析」(『道路投資の便益評価(東洋経済新報社)』第2章)として出版した。ここでは、経済理論と現実の費用便益分析との関係について、実際用いられている費用便益分析マニュアルを例にとりながら解説している。 第四に、費用便益分析の現状と今後の課題を展望論文としてまとめた。この成果は、「交通プロジェクトの費用便益分析-現状と課題-」(応用地域学研究13号)として出版した。ここでは、神戸空港の費用便益分析を例にとってその問題点を示し、今後の費用便益分析のあり方に関して問題提起を行っている。
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