道路への混雑税の導入等の道路料金政策は、当然収入を生む。本研究では、道路料金収入を道路投資、鉄道投資、鉄道への補助金に使うといった収入還元政策の分析を行った。経済学的には、道路料金収入は、最も「効率の高い」使い方をすべきというのが解答である。その意味では、道路料金収入を交通以外に使っても何ら不思議ではない。しかし、ロンドンの混雑税政策、日本の道路特定財源制度のように、道路料金収入を交通部門内で使うといった事例は現実には数多い。本研究では、道路料金収入が交通ネットワーク内の投資、補助金政策と結びつく場合の理論的分析を行い、また、東京圏のデータを用いた仮想的シミュレーション分析を行った。シミュレーション分析では、以下の興味深い示唆が得られた。1)これまでの研究では鉄道の混雑は考慮されてこなかったが、東京都心のように道路と鉄道の両方が混雑している状況では、道路料金収入を鉄道投資よりも、道路投資に充てることで総余剰を改善できることもある。この点では、道路料金収入を公共交通だけに使うことだけが望ましいわけではない。2)鉄道の投資費用が低い場合や道路の混雑がひどくない場合は、鉄道投資が道路投資よりも総余剰を改善できる。3)道路料金収入を鉄道への補助金に用いて総余剰が増加するのは、鉄道と鉄道が混雑しておらず鉄道運賃が高いときである。この場合は、道路投資や鉄道投資に意味はなく、高すぎる鉄道運賃を補助金で引き下げることによって総余剰を増加させることができる。
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